1.貸しビルなど賃貸等不動産の時価開示の背景
一時、電鉄会社が所有している不動産の価値に目をつけた株式買い占めが話題になったことがありました。当時は、大都市の駅前に貸しビルを持っていても、広い空き地を持っていても、公表される貸借対照表に記載される土地建物の金額は"簿価"でした。
なぜなら、所有する企業側でも、売ることを考えていれば別ですが、あえて時価を算定する必要性は少なかったのだと思われます。また、企業内部で不動産活用を考えるために時価を算定していても、公表する義務はありませんでしたので、外部からは相続税路線価等から推測するしかありませんでした。
このように、会社が所有する不動産は、取得したときの価格を簿価として計上し、これを貸借対照表に載せていたのですが、2000年代に入ると、上場企業などで世界的な会計基準の収斂(コンバージェンス)が進められ、不動産の時価……
釜口 浩一