I.国際税務の概要
1.国際税務とは何か
近年経済のグローバル化に伴い、個人や企業の活動が国際的に行われており、そのため、経済活動から生じる所得に関する各国の税金の取り合いがより激しさを増している。これは、各国がバラバラに税制を立法し執行していることが一つの原因であるといえよう。この結果、個人や企業にとって困ったことに、一つの経済活動に対して、複数の国が何度も課税したり、どの国も課税しなかったりする現象が生じるケースもあり、こうした国際的な二重課税の発生により、国際間の経済活動が停滞することは、納税者にとっても、課税側にとって好ましい状態とはいえない。このような状態に対処するため、各国の国内法と各国や地域の間で結ばれる条約において、その取り扱いを決めてきた。これが「国際租税法」とか「国際税務」と呼ばれている分野である。
しかし、明確に「国際租税法」という法律が存在して……
小嶋 大志