1.はじめに
2008年施行の労働契約法、労働争議調停仲裁法等を契機として、労働者が自己の権利を保護するための法的手段が拡充され、労働者の権利意識も向上した。特に、仲裁・訴訟の費用が引き下げられたこともあり、近年、労使間紛争をめぐる事件が大幅に増加しつつあるが、単に事件数が膨れ上がっただけでなく、内容の複雑化、場所的な広域化、訴訟当事者の集団化といった傾向もみられ、人民法院の負担増が顕著となっていた。そこで、最高人民法院は、労使間紛争訴訟の減少、労使間紛争にかかる裁判基準の統一を目的として、2年半の準備期間を経た2010年9月13日、「労働争議事件の審理に係る法適用の若干の問題に関する司法解釈三」を公示し、翌日から施行となった。
これは、わずか18条からなる司法解釈であるが、労使間紛争事件の受理、訴訟当事者、残業に関する挙証責任、終局裁決の認定基準など、実に重要な内容を含んでいる。そこ……
劉新宇