敦煌と言えば、日本人には井上靖の世界。映画「敦煌」でも馴染みの深い場所です。日本人には郷愁をそそる響きですが、現在の敦煌は、表面上は外国人向け観光地として整備され尽くしており、素の中国、辺境の自然や少数民族に興味のある筆者には、むしろ新疆ウイグル自治区への旅のほうが心に残りました。今回は、敦煌の中でも、通常の観光ではあまり触れることのできない素の敦煌、および新疆ウイグル自治区で出会った回族との交流に関する現場体験記です。
敦煌で日本人によく知られているのは、莫高窟と鳴沙山・月牙泉です。莫高窟は、山西省大同市の雲崗石窟および河南省洛陽市の龍門石窟と並ぶ中国三大石窟の1つで世界遺産でもあります。この三大石窟で特に日本人に有名なのが、甘粛省敦煌の莫高窟でしょうが、北京に住む一般の中国人には、雲崗石窟や龍門石窟の方が有名なようでした(莫高窟の正門には、寄付をした日本人の写真が飾られてい……
奥北 秀嗣