1.はじめに
これまで2回にわたって、不正リスクの低減や財務数値の信頼性の担保を図る上で、中国現地法人の内部統制や経理体制を整備することの重要性について記載してきた。最終回となる今回では、親会社の監査法人がその内部統制監査(J-SOX監査)を実施する際に、中国子会社を監査対象とする際のポイントとしてどのような点が挙げられるかについて私見を記載する。
2.全社的な内部統制
通常、内部統制監査で評価の対象となるのは、内部統制の中でも「財務報告に係る内部統制」であり、これは「全社的な内部統制」と「業務プロセスに係る内部統制」に区分される。日本の内部統制実施基準によれば、「全社的な内部統制」とは、企業集団全体を対象とする内部統制を意味している。ただし基準では、「企業集団内の子会社や事業部等に独特の歴史、慣習、組織構造等が認められ、当該子会社や事業部等を対象とする内部統制を別途評価対象とす……
中村 亨