異文化理解という言葉がある。海外で仕事をする人なら必ず頻繁に耳にする言葉で、「相手の文化や習慣を理解し、尊重しましょう」「自分のやり方を押しつけるのではなく、相手の文化を考えて歩み寄りましょう」「違いを受け入れましょう」という文脈で使われている。確かに、中国に行けば中国の文化風習に則って行動しなければ相手にされないし、仕事にもならない。だから、中国人のものの考え方、中国人とのつきあい方、中国人との交渉術など多種多様な本が書かれ、中国セミナーの学習機会も豊富にあり、日本人はそれらをとらえてマメに勉強している。しかしそれでも中国は不可解でうまく行かぬことも多々ある。結局、本や講演で得た知識などは不可欠ではあっても充分ではないのだ。現地で生身の人間とぶつかって、体で覚えていくしかない。
これを、自分が異文化に飛び込むのではなく、異文化から人を受け入れるケースに置き換えてみよう。この場合……
井上 一幸