はじめに 今回から数回をかけて、現在の中国における人件費の動向と今後の予想などについて解説いたします。かつては、安い労働力が魅力であるといわれ労働集約的な生産基地を中国に建設する動きが主流でしたが、現在ではこのような工場は経営計画の大幅な見直しを迫られてきています。その一方で、新規に進出を検討されている企業の中には、いまだに中国での人件費は安いといった先入観を持っている方もおり、これを正確に把握した上で計画を立案する基礎にしていただければ幸甚です。
1.最低賃金と平均賃金の動向
下の表は、上海市を例にとって2007年からの最低賃金と平均賃金の動きをまとめたものです。これを見ると、組立工場や縫製工場などで主力となる最低賃金付近の低賃金層の賃金は2009年を除き毎年10数パーセントという、日本では考えられない比率で上昇しているのがわかります。 平均賃金も最低賃金ほどではないにせよ、や……
田畑 泰朗