このコラムの第5回で、「優秀な中国人」というよく聞く表現について触れたが、そこで書いていなかったことを一つ。「優秀な中国人」のいくつかの(思い込みによる)根拠のうちの一つが、中国人は英語もできるというものだ。しかしこれも怪しいといわざるを得ない。
中国人の英語力を考える場合、二つのケースに分けなければならない。まずは、中国で大学を卒業した新卒の学生を指して、英語ができると考えるのはあながち間違ってはいない。しかし、ビジネスレベルで不足がないかと言えば疑問が残る。日本の新卒よりはできる程度と考えておくのがいいと思う。なぜかというと、中国の大学では全学生に、一定の英語力を卒業条件として課しているからだ。大学英語と呼ばれる認定制度があり、最低でも“大学英語四級”を取得しなければ卒業できない。できる学生はその上の六級を取得するし、英語専攻の学生なら八級が必須である。採用を担当する人なら、……
井上 一幸