一.はじめに
ビジネスの実務において、取引先に利益を還元するケースが多く見受けられるが、このような利益還元を正確かつ事実どおりに財務帳簿に記載しなかった場合には、商業賄賂と認定されるリスクが高いと思われる。弊職らは、最近あるM&Aプロジェクトの法務デューデリジェンスにおいて、機械メーカーである対象会社(以下、「X社」という)の従来の取扱いに商業賄賂とみなされる恐れのある利益還元を発見した。以下では、この発見事項を巡って利益還元に関する商業賄賂の問題を解説したい。 二.X社の利益還元方法
X社は、次の2つの方法で販売代理店に対し利益還元を行っていた。
利益還元方法① 販売代理店の年間販売台数に応じて利益還元額を計算し、販売代理店から、利益還元額相当額のインボイス(部品代や労務費や修理費などの名目)を受領する代わりに、利益還元額を販売代理店に支払う。 利益還元方法② 販売代……
劉新宇