概要
職務代理は企業が経営活動を行ううえで必要なものである。「民法典」が2021年1月1日から正式に発効し施行され、職務代理は「民法典」の第170条に登場している。本稿は、「民法典」における代理制度の新体系を基に、企業の経営活動における職務代理制度の実運用上の問題を踏まえ、「民法典」を背景にした職務代理の規定を考察し、企業の経営活動における職務代理制度の運用に係るリスク及びその対策について助言を行うものである。
本文
一、「民法典」における職務代理の解釈
職務代理(agency in duty)とは、代理人が法人又は非法人組織における自己の職務に基づき、自己の職権に従い当該法人又は非法人組織に代わって対外的に民事法律行為を行うことを指す。職務代理について、「民法通則」においては規定を設けずに、企業法人の責任負担の観点から、同通則の第43条[1]に規定を設けた。「民法通則意見」においてはそ……
沈偉良