近年、企業のコンプライアンス要求は絶えず高まり、従業員に生じ得る規則違反ひいては違法行為について、企業は通常、内部で又は外部機構に依頼して調査を行う。調査の過程において、ややもすると、証拠の収集方法によっては従業員のプライバシー権が侵害されたり、取得した証拠が適法性の問題で裁判所に認められなかったりする恐れがある。この点を考慮し、本稿では、実務取扱において企業がよく使う調査・証拠収集の方法について、司法判例を踏まえて、証拠収集方法の適法性を分析し、コンプライアンス面から考察する。
一、概念を明確にする
(一)従業員のプライバシー権
「民法典」第1032条では、自然人はプライバシー権を有すると定めている。いかなる組織又は個人も、他人のプライバシーを偵察し、侵し、漏洩し、公開する等の方法をもって他人のプライバシー権を侵害してはならな……
董紅軍