■ チェック機能は働かなかったのか
前回、経営の現地化(属人化)を進めた末に警察沙汰になった事例を紹介しました。どこかで引き返すポイントはなかったのか、改めて考えてみます。
結論から言うと、総経理の赴任から解雇を決意するに至る10年近くの間、日本側のチェック機能はほとんど働きませんでした。これはこの会社だけではなく、同じような「現地属人化」を進めている会社の99%が同様の道筋をたどると思います。
当然、現地からの報告は上がってくるでしょう。数字は本社も見ています。でも、実際に何が起こっているのか、日本側には見えなくなります。なぜか。現地の人事権を一人の責任者に握らせたからです。その時点で、他の社員からは声が上がらなくなります。
日本側は「100%の人事権なんて持たせていない」と言うかもしれません。が、権限の線引きをふわっとさせていると、結果的に現地のボスが全部を握ります……
小島 庄司